遅くてもやらないよりまし

シングルマザーの会社員の日々の考えごと

赤い花

大学の頃、ロシアの言語や文化を専攻していた。

その流れで、ロシア文学もまあまあ読んだ。

文学はあまりハマらなかったので、大雑把に勉強して、そのあとすぐに言語学や歴史の方に進んでしまったけれど…1つだけ心に残っているのが、ガルシンの「赤い花」という小説だ。


まず、この小説はすごく短い。
岩波文庫で50ページもなかった記憶がある。

だけど、濃い。

精神を患った主人公が、療養先で咲いていた赤い花を敵視して、彼なりの正義に則って、その悪(花)に立ち向かう話。(かなり端折って説明するとそんな感じ)


活字なのに、その「赤い花」が鮮明に印象に残る。

私の勝手なイメージで、ロシア文学は風景をモノクロで脳内再生してしまうけれど、モノクロの景色の中に、真っ赤なケシの花があるような、そんな鮮烈な風景に衝撃を受けた。


主人公が支離滅裂になればなるほど、赤が鮮やかに映えていく感じにぞっとしたし、短い小説の中でそこまでのインパクトを残せるガルシンという作家に興味が湧いて、しばらく好んで読んだ。


ガルシンの作品の大半は朧気な記憶になってしまったけれど、それでも今も、春~夏に、道ばたに真っ赤なポピーが咲いていると、真っ先にその小説を思い出してしまう。