最近あちらこちらで赤い花、ポピーが見頃を迎えている。
赤くて目を惹くきれいな花。
前にも一度ブログに書いているが、その季節になると読みたくなる作品がある。
ガルシンの「赤い花」。
精神科に入院する主人公が、赤いケシの花に徐々におそれや敵意などの憎悪の気持ちを募らせて、最後は摘み取り自身も命が尽きるという、あらすじだけで不穏満載な作品なのだが…妙に惹きつけられてしまう。
作品は、とても短い。
どんなに引き延ばしても小一時間で読み終わる短さ。
ガルシン自体が、33歳でこの世を去っているので、大長編の名作があるわけでもなく作品数も少ないのだが…
個人的には、本当に、鮮烈な印象が残る作品だった。
大学のロシア文学の講義で課題となり、感想をレポートで出すために渋々大学生協で買ったのに、破けるまで読んでしまった。
そして、破けていない本を買い直したものが家にまだある。
読み始めるとやっぱり不穏なので、読後のテンションは決して上がらないし、むしろ下がる。暗くなる。だって、主人公死んでしまうし。
だけど、ずっとモノクロの世界観に唯一ケシの花一輪だけが、妖艶に赤く咲いている光景がくっきりと脳裏に浮かび、それをまた、再現したくなってしまうから、読んでしまう。
不思議な作品。
街中でポピーが咲いているとつい思い出してしまう。
当時戦争で負傷して心を病み苦しんだと言われるガルシン。
今の彼の祖国を見たらどんな作品を書くのだろうか。
今週のお題「読みたい本」