遅くてもやらないよりまし

シングルマザーの会社員の日々の考えごと

おじいさんの青い箱

空き時間が出来たので、亡くなった祖父のことをまた書いてしまう。

私は中学卒業と同時に、実家を出た。
高校は下宿しながら通った。

ホームシックになって時々帰省したとき、祖父は帰り際に必ずアルフォートミニをくれた。

汽車の中でけぇ!(食えよ)と。

電車の中で食べて、寂しくって寂しくってポロポロ泣いた。


そして、長男が生まれて、産後の肥立ちが悪くてしばらく帰省したときも、次男が生まれて初めて泊まりに行ったときも、元夫から逃げるように3人で大晦日に帰省したときも、帰り際になると必ず、あの青くて平べったい、アルフォートミニの箱をくれた。


帰りの車でけぇ!と。
途中休みながらいけ!と。


子どもたちが少し大きくなってからは、私ではなく、子どもたちに一箱ずつくれた。

ケンカしないでけぇ!でも、1個くらいは母さんにもけろよ(=あげなさい)!と。


だから、私たち親子は、アルフォートミニを見ると同時に祖父が浮かぶ。

おじいさんの青い箱、と子どもたちは呼ぶ。

小さな四角の、舟の絵が描かれたチョコレートの甘い味。
いつだって、あの四角を噛んでいると、泣きたい気持ちも寂しい気持ちも少しだけ落ち着く。


祖父も、私たちを見送ったあと1個齧って、「騒がしいのが帰ると静かになったなぁ」とつぶやいていたよと、母から聞いた。

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朝、ぞろぞろ起き出した息子たちに、「おじいさん、死んでしまったの。もうお話はできないけれど、お別れに行こう。」と話すと、長男がこう言った。


「おじいさんの青い箱買う。お店に寄って。」
「天国に行く途中、おじいさんが食べれたらいいじゃない?」



うんうん、そうだねぇ。同じこと、思っていたよ。

…泣いた。泣いた。泣かすな、息子よ。


アルフォートミニを買って実家に帰ろうと思う。



きっとこれからも、私たち親子にとって、アルフォートミニは「おじいさんの青い箱」なんだと思う。

寂しさが軽くなる、おまじないの箱だ。