遅くてもやらないよりまし

シングルマザーの会社員の日々の考えごと

シアワセノカタチ


長男が友達と遊ぶとき、たまにリクエストを受けてお菓子を焼くことがある。

型抜きもしない、中身も、いつもアーモンドと叩き割った板チョコとココナッツで変わり映えしない、おそろしく大雑把な焼き菓子。

だが、長男の友達には「あいつの母さんは、時々不思議な形の美味しいクッキーをくれる」と地味に定着したようで、それを目当てにたまに何人か遊びに来る。


今日、私が仕事の間に、友達と公園で話し合いをするときに持っていきたいと言うので、昨日焼いておいた。


そんな長男、今、クラスメイトのお別れ会の準備をしている。
入学時から一緒のクラスだった女の子が、もうすぐ隣県へ転校する。

長男曰く、「新しいお父さんが住む街に行くんだって。名字も違うのになるって」とのこと。


親同士のつながりの情報からも、そのお母さんが年下の交際相手と再婚することと、その結果一家みんなで引っ越すことを、夜の習いごとのの送迎時に聞いた。

私は全く他の家の事情に関心がなく、普段は噂話が始まるとその場から気配を消してフェイドアウトする。
そのため、そのお宅がうちと同じくシングルマザーなことも今回初めて知った。


他愛もない世間話の中で、そのお母さんも娘さんも、再婚相手の方にそれはそれは大切にされているらしい、ということでもちきりだった。

授業参観へも運動会へも足繁く通い、子どもの父親になろうとしてくれて、恋人であるお母さんのこともとても大切にしてくれているのが、傍から見ても伝わってきていた、と。


へぇ〜それは素敵ですね、と相槌を打っていたら、その中の世話好きなお母さんが
「まーさん、良かったら誰か紹介しよっか?」
…と言ってきた。
その人は町の中で顔がとても広く、曖昧に返したら本当にお見合いをセッティングされそうだったので、「私も好きな人はいるし、再婚は…まだいいかなって」とお茶を濁した。


実はこれまでも各所からいくつかの縁談を打診されたことがあったが、断っている。



幸せの形は再婚だけではないと思うのだ。


本音を言えば私の闇の心には、ほんの少し嫉妬心もある。それは隠せない、隠さない。羨ましい。

あなたは何もしなくていい、家のこと守って!とパートナーに乞われて、囲われて愛されることへの憧れもゼロではない。

しかし、現実に私がそれをされたら、多分10日で飽きるだろう。
何かしら働きたくなり、広い外へ出たくなり、社会と繋がりたくなり、大きく息を吸って吐いて新鮮な空気を取り込んで、自分で運転して生きる道を探したくなるだろう。


実は人見知りで、とびきり社交的かと言われるとそうでもなく、とびきりの美人でもない私は、今まで自分の雑草みたいな境遇で、向上心1つで自分を守ってどうにか生きてきた。
…今さらキャラクターを180°全振りして変えることなど、出来ない。


私が焼くクッキーは、面倒なので型抜きせず、いつもいびつで、でこぼこだが、それでも、サクサクして、甘くなくて、我ながら美味しい。


そんな感じで、型にはまらないシアワセのカタチがあったって、良いんじゃないかな、と、帰りの車の中で、思い直した。



再婚した息子のクラスメイトのお母さんは、とても可愛らしくておしゃれで女性らしくて、感じが良い人だった。色んなこと、これまで頑張ってきたに違いない。
同じような境遇だった身として、心から、どうぞお幸せに、お元気で!と言いたい。